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実績紹介

アートとロボットの融合が、新たな可能性を生み出す ~「ゴーテック2022」レポート~

ウィングロボティクスが製造分野での生産性向上に向けて、開発・改良を進めている協働ロボット。それをアートの世界でも活用する例が生まれています。

2022年3月に開かれた「ゴーテック2022」(主催:テレビ朝日)では、テレビ朝日コーポレートデザインセンターの小林宏嗣さんが、弊社のアームロボットを用いたアート作品を披露しました。ロボットに新たな可能性を、芸術に新たな表現力をもたらす試みとなりました。

作品のメインとして光を放つロボットアーム

2022年3月23日(水)、24日(木)の2日間にわたって開かれた「ゴーテック2022」は、テレビ朝日グループの各社・系列各局が開発した、最新機器やサービス、国内外の先端技術を紹介する技術展示会です。

これまでは関係者のみに向けて開催されていましたが、2022年は初めて一般公開され、新型コロナウイルスの影響もあってメタバース上のバーチャル展示会となりました。

計23のブースが並ぶ中、デジタルアートのステージに登場したのが、テレビ朝日コーポレートデザインセンターによる、弊社のアームロボットを用いた作品でした。

タイトルは『Germination(発芽)』。

森のような深く暗い空間にたくさんの小さな光が走り、駆け上るかのように中央のロボットに集まっていきます。ロボットはゆっくり動き始め、アームの先に取り付けられた天体のような形の照明が光を放ち始めます。光が強くなるとともに空には稲妻が走り、周囲が輝き始め、空間全体がまばゆい光に包まれていきます。

何もない空間から生命が「発芽」し、繁殖、繁栄していく。それをダイナミックに表現した、これまでにはない全く新しいアートです。

ロボットアームのモーション制作は使い慣れた「Blender」で

今回の作品は2つの点で、ロボットの可能性を大きく広げてくれるものとなりました。

その一つが、ロボットの動きを思ったように再現させることです。

「ロボットアームでいかに“有機的な動き”を表現できるか。それが課題でした」

コーポレートデザインセンターの小林宏嗣さんは、制作の過程で特に重視した点をこう語り、そのため困難も多かったと振り返っています。

「製造現場で使われることを想定して造られているロボットには、安全のためにあらゆる『制限』が設けられています。たとえば、人間が少し触れただけで、ロボットは危険を察知して動きを止めてしまいます」

ロボットに照明をつけたり、そのためのコードを巻き付けたりと、手を加えていくたびに、これらの設定を変更する必要がありました。また、動きをもっとダイナミックにしたいと考えましたが、思ったようなスピードを出すことができません。初めは仕様だからと諦めかけましたが、試行錯誤の上で期待どおりの動きをさせることができるようになりました。

「Blender」を使ってアームロボットの動きを設定していく

ロボットアームのモーション制作は使い慣れた「Blender」で

もう一つが、アートとロボットとの橋渡しです。

通常、ウィングロボティクスの協働ロボットは専用ソフトで動作させています。一方、小林さんは使い慣れた「Blender(ブレンダー)」を使用して、ロボットのモーションを制作したいと考えました。「Blender」とは、3DCGアニメーションを作成できるオープンソースのグラフィックソフトウエアです。

そこで弊社は、「Blender」によるロボットの制御を可能にするソフトウェアシステムを構築しました。これには、ロボットに与える動作コマンドの記述や、動作コマンドのロボット制御命令への変換などが含まれています。これにより、小林さんが「Blender」の画面上でロボットの3Dモデルに動作を設定すれば、このシステムが自動でデータを変換して、実際のロボットへプログラムを送り、動きを再現させられるようになりました。

こうして、約半年の期間をかけて、頭をもたげたり、あたりの様子をうかがったり、周りの変化に過敏に反応したりしながら成長していくロボットができあがりました。ロボットに「生命を吹き込む」ことに成功したのです。

ライティングの制御やモーションの発動は、「TouchDesigner」で構築したシステムで一括制御されています。ロボットの動きとライティング、プロジェクションマッピング、幻想的な音楽が互いに連動し、時間とともに生命が生まれ、躍動していく世界が表現されました。

ライティングやモーションは「TouchDesigner」で構築したシステムで制御

ロボットが「人間のパートナー」となるために

「メタバース上での一般公開だったので、スケール感が伝わりにくかったのが、いまひとつ残念です。ぜひ実物を目の前にして、観ていただきたかった」と小林さん。

アートの世界ではすでにCGは盛んに採り入れられ、音と映像が融合したプロジェクションマッピングなどの多くの作品が生み出されています。そこにロボットという“実物”が加わると、芸術分野での表現力はよりリアルに、より豊かになっていきます。

実際にアメリカでは、ロボットはすでに広告や舞台、ショー番組の演出の一部として採り入れられています。日本でも今後、ロボットを活用したアートの世界が広がっていくことでしょう。

今回、弊社が開発した、協働ロボットの専用ソフトと「Blender」を橋渡しするシステムは、「Blender」から直接、ロボットを制御させられるようにするものです。画面上でロボットの動きを3Dでシミュレーションすれば、その動きをそのままリアルなロボットに反映させられます。

現在、ロボットの動きを制御できる専門家の多くは、大手メーカーのエンジニアです。しかし、このシステムにより、「Blender」を利用するアニメクリエーターをはじめ、より多くの企業や人たちが、ロボットを活用していけるようになるでしょう。

ウィングロボティクスは、ロボットを「人間のパートナー」として広く日常生活に導入していくことをビジョンとして掲げています。今回の作品と創作のための試行錯誤は、弊社にとっても将来に向けて大きな経験となりました。

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